一次情報の女(実録)
一次情報の女(実録) #05

どっちが先かは、決めなくていい。ニワトリタマゴの話

栗田加奈子

一次情報の女の続きです。

「鶏が先か卵が先か」は、待つ理由になりやすい

サイトや発信の打ち合わせで、こんなやりとりになったことはありませんか。

「お客様に聞いてみないと、サイトに何を書けばいいか決められないよね」

「でも、何を聞くかが決まらないと、聞きに行けないよね」

あるいは、こんなやりとり。

「数字がたまってから、どこを直すか考えよう」

「でも、何か直してみないと、比べる数字がたまらない」

どちらの言い分も、もっともです。もっともだから、話がそこで一周して、また来月。

「鶏が先か卵が先か」。答えの出ない問いのたとえとして、よく使われる言い回しです。私はこの言い回しを聞くと、ときどき、後回しにするための好都合な理由に聞こえてしまうことがあります。「〜したら」「〜できれば」とタラレバを重ねているうちに、どちらにも手を付けないまま、時間だけが過ぎていく。

仮説がにわとり、現場の気づきが卵。どちらか一つあれば動ける

だから私は、この二つをまとめて、一つの言葉で呼ぶことにしました。

「ニワトリタマゴ」。

にわとりは、「こうしたらいいんじゃないか」という仮説。卵は、お客様の一言や、数字の小さな動きのような、現場で拾った気づき。

どっちが先か、ではなく、どっちもあっていい。そして、どちらか一つあれば動けます。

「トップページのこの言い方、伝わっていない気がする」と思っているなら、それがにわとり。営業の人が「最近、同じことをよく聞かれるんだよね」とこぼしていたのを覚えているなら、それが卵です。

にわとりがあれば、試してみる。試せば、お客様の反応という卵が拾える。卵があれば、そこから次のにわとりを立てる。どっちから始めても、次につながります。

にわとりから吹き出しへ、吹き出しから卵へ、卵から芽へ、芽からメモへ、メモからまたにわとりへと、矢印でぐるりと回っている

会議が一周しそうになったら、合言葉で止める

私はこの言葉を、合言葉のつもりで使っています。心の中では「タラレバ言っていないで、早く前に進みなよ!」と言いたいところを、もう少し軽く言うための一語です。もちろん、自分に向けても。

たとえば、冒頭の会議。「お客様に聞かないと書けない」「何を聞くか決まらないと聞けない」と一周しかけたところで、誰かが言う。

「それ、ニワトリタマゴだね。じゃあ、手元にあるほうからやろう」

「来週の訪問のついでに、一社だけ聞いてみようか」

「それなら答えを待たずに、トップの一行だけ先に変えておこう」

どっちが先かを決める話が、何から手を付けるかの話に変わります。

手元の一つから動かすと、次のにわとりと卵が出てくる

私自身、ずっとこの繰り返しです。

以前のコラムで書いた話が、ちょうどその形でした。ある製造業の会社で、副社長が日ごろ口にしていた「うちに来て、見ながら話しませんか?」という誘い文句。これが卵です。そこから「この一言を、そのままサイトの看板にしたら伝わるんじゃないか」というにわとりを立てて、看板メッセージを「ご来社してみませんか?」にしました。公開してみると、問い合わせてくるお客様が「おたくに行って、話がしたい」と言う。新しい卵です。

最近の私の頭の中は、こんな感じです。にわとりが先か卵が先か、じゃなくて、こっちににわとり、こっちは卵! あっちこっちに、どんどんわいて出てくる。

お客様のサイトで決めたことを、ひきだしのサイトにも反映してみる。反映していると、また別の「こうしたら」が浮かぶ。それならお客様のサイトにも入れたい。だから、その前にまず自分たちで確かめてみる。一つ片づける前に、次が生まれています。

忙しいけど、楽しくて、やめられません。

手元から動けるのは、試すまでが近いから

ただ、手元から動こうにも、試す場所が遠いと動けません。

公開したサイトに直したいことが出てきたら、制作会社に依頼して、見積もりをもらって、反映を待つ。それ自体は丁寧な進め方です。ただ、待っているあいだに次の思いつきが出てきても、「また頼むのも悪いし」と、そっと飲み込んだことはありませんか。にわとりが立っても、試せなければ、卵は拾えません。

ひきだしでは、お客様のサイトも自分たちのサイトも、手を動かすところをAIと一緒にやっています。使っているのは、Claude Codeという、言葉で指示するとサイトの中身を書き換えてくれるAIです。直した跡は一つずつ残り、公開の前に確認用の画面で見て、まずければ前の状態に戻せます。公開するかどうかは、人が見て決めます。

だから、小さく試すのが怖くない。思いついた一行を、すぐに確認用の画面で試せる。私が手元から動けるのは、気合いではなく、試すまでが近いからです。

にわとりか卵を一つ持って、声をかけてください

最後に、あなたの手元のにわとりと卵を探してみてください。「こうしたらいいのに」と思っていることが一つ。最近、お客様や営業の人から聞いて、引っかかっている一言が一つ。どちらか一つあれば、始められます。

社内で「どっちが先か」で止まっている話があれば、そのにわとりか卵を一つ持って、お問い合わせから声をかけてください。一行で構いません。どっちが先かは、決めなくていいので。

栗田加奈子

栗田 加奈子

BtoBマーケティングコンサルタント/ひきだし代表

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