一次情報の女(実録)
一次情報の女(実録) #00

一次情報の女、「一次情報」を検索する

栗田加奈子

一次情報は、名前より先にあった

先日、ある方に言われました。

「クリタさんの話って、全部、自分で試した結果の話ばかりなんだね。一次情報だね」

……一次情報?

ほめられてる気配は、する。でも正直、ピンと来てない。っていうか、「一次情報」っていう表現、いつから世の中こんなに当たり前になってたの??

その場では「そうですかね〜?」なんて流しつつ、あとでこっそり検索しました。一次情報とは、自分で直接体験したり確かめたりして得た情報のこと。二次情報は、それを誰かがまとめたり解説したりしたもの。三次情報は、二次情報の寄せ集め。……なるほど。つまり「一次情報」を知らなかった私は、一次情報の女である前に、二次情報にも疎い女だったわけです。

ついでに調べたら、この言葉、元は歴史学者と図書館の世界の用語らしいです。それがここ数年、Googleが「実体験のあるコンテンツ」を評価すると言い出したり、AIが記事を量産できるようになったりした反動で、急に世の中の流行り言葉になったんだとか。私は、どっちも知らずにやってました。

でも、言われてみれば確かに、私、それしか話してない。

借りてきた話は、なぜか続かない

思い出したことがあります。営業時代、後輩の男の子たちにしょっちゅう「くりりん、提案書見せて!」って言われて、私の資料はよくパクられていました。で、私も真似して、人の資料から自分の提案書を作ろうとしたことがあるんです。そうしたら——話がつながらない。全然書けない。当時は「私、要領悪いんかな」って思ってました。

今なら分かります。あれは要領の問題じゃなくて、自分で確かめていないことは語れない体質だったんです。私の提案書がパクれたのは、あれが私の一次情報でできていたから。借りてきた資料が使えなかったのは、それが私にとって、誰かのまた聞きだったから。

かっこいい理論とか、よそで仕入れた最新事例とかをスラスラ語れる人、正直うらやましいなって思うことすらあります。でも私の持ちネタは、お客さんの現場で言われた一言とか、半信半疑のまま試した打ち手とか、その結果どうなったかとか。そんなのばっかり。不器用ながらに、一次情報しか出せないんです。

いま流れてくる情報は、だいたい誰かの話のまた聞きです。AIが記事を量産できるようになって、まとめのまとめのまとめが、きれいな顔して流れてくる。

AIは、量産機ではなく鏡になる

ただ、面白いのはここからで。私にとってAIは、その量産機とは逆の働きをしてくれています。自分の一次情報を「それって世の中で言うと、こういうことですよ」と照らし合わせてくれる鏡なんです。現場で我流だと思ってやってきたことに、実はちゃんと名前があったと教えてくれる。おかげで最近、ちょっとずつ自分を客観的に見られるようになってきました。この「一次情報」だって、そうやって知った言葉です。

だったら、自分で試した話しかできないこの不器用さ、弱点じゃなくて、持ちネタなのでは?

というわけで、このシリーズでは、私が現場で実際に見て、聞いて、試して、確かめてきた話を書いていきます。きれいにまとまらない話も、格好悪い判断も、そのまま。だって、それしか書けないので。

一次情報の女、はじめます。

最初の話は、「ご来社してみませんか?」——お客さんに教わった話から。

栗田加奈子

栗田 加奈子

BtoBマーケティングコンサルタント/ひきだし代表

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