数字の読み方

その「CV」は、何を数えているか

こういうときに読む「メルマガ登録も資料請求も問い合わせも、ぜんぶまとめて『CV』でカウントしてます」と言われたとき

「CV数が3倍になりました」という報告は、たいてい噓ではない。ただし、その「CV」の中に、資料請求・メルマガ登録・問い合わせ・商談化が、性質の違うまま一緒くたに入っていることがある。

よくある誤解:「CV」は、増えれば増えるほどいい

CVという言葉は便利すぎる。フォーム送信、資料ダウンロード、メルマガ登録、電話問い合わせ、見積依頼——サイト上で起きる「何かしらの反応」を、ひとまとめに「CV」と呼んでしまえば、報告資料はすっきりする。CV数が先月より増えていれば、それだけで成果が出ているように見える。

しかし中身を分けて見ると、印象が変わることが多い。増えた分のほとんどがメルマガ登録で、問い合わせ件数はほぼ横ばいだった、というのはよくある話である。

実際はこう:「CV」の中に、重さの違う行動が混ざっている

同じ「1件」でも、資料請求とメルマガ登録と問い合わせでは、その先にある行動の重さが違う。メルマガ登録はメールアドレスを渡すだけで完了する。資料請求も、検討をまだ始めていなくても情報収集として気軽に押されることが多い。一方、問い合わせや見積依頼は、社内で稟議に上げる前提や、比較の土俵に自社を乗せる意思がないと送信されない。

この違いを無視して合算すると、「軽い反応」が増えただけなのに「商談につながる反応」が増えたように見えてしまう。CVという言葉そのものが噓をつくわけではない。中身を分けずに合算した時点で、読み手が勝手に一番重い意味——商談化に近い意味——で受け取ってしまうだけである。

なぜそうなるか:段階を分ける言葉がないと、全部が同じ「1件」になる

この問題は、ひきだしが初めて気づいたものではない。BtoBマーケティングの現場では、以前から「見込み客」をひとまとめに扱う弊害が指摘されてきた。マーケティングと営業のあいだで、「反応」を測る言葉がそもそも段階分けされていなかったためである。

Forrester社(旧SiriusDecisions社)が公式ブログで解説している「デマンドウォーターフォール」というモデルは、この揃わなさを課題として設計されている。同ブログは、需要管理のプロセスには「一貫性とアラインメントの欠如」がしばしば起きると述べたうえで、反応(Inquiry)→マーケティングが有望と判断したリード(MQL)→営業が受理したリード→営業が商談化と判断したリード→成約、という段階を分けて説明している。狙いは、マーケティングと営業が同じ言葉で、同じ重さの数字を測れるようにすることである。

CVという1語で全部をまとめてしまうのは、このモデルがせっかく分けた段階を、また1つに押し戻す作業に等しい。段階を表す言葉がなければ、資料請求も商談化も、報告の上ではただの同じ「1件」として並んでしまう。

現場ではこうする:CVを言う前に、どの段階かを添える

対策は難しくない。CVという言葉自体をやめる必要はなく、前後にひとことを添えるだけでいい。「CVが3倍」ではなく、「資料請求は3倍、問い合わせは横ばい」と言う。フォームや行動の種類ごとに計測を分け、報告のときも合算した数字だけを見せない。

これは他社の報告を疑うためだけの話ではない。自社の報告でも同じことが起きる。社内で「今月は問い合わせが増えました」と伝えるとき、その中に資料請求が混ざっていないか。「CVが増えた」と喜んだあとに商談化件数が伴っていないと、次に報告した数字も軽く受け取られるようになっていく。段階を分けて話す手間は、社内で自分たちの報告を信じてもらい続けるための手間でもある。

自社で確かめる3つの質問

  1. 自分たちが「CV」と呼んでいるものの中に、性質の違う行動がいくつ混ざっているか。
  2. その中で、商談化・受注に直結しやすいのはどれで、比率はどれくらいか。
  3. 社内で「CVが増えた」と報告するとき、聞き手は資料請求とアポイントを区別して受け取れているか。

この記事の根拠・出所

  • Forrester(旧SiriusDecisions)公式ブログ「The Demand Waterfall: A Modular System to End Chaos」。デマンドウォーターフォールが、需要管理プロセスにおける「一貫性とアラインメントの欠如(lack of consistency and alignment)」を課題として設計されたモデルであり、Inquiry→MQL→営業受理段階→営業判定段階→成約という5段階で構成されると説明している。ひきだしが原典を確認。forrester.com
  • 各段階の英語呼称(Inquiry/MQL:Marketing Qualified Lead/SAL:Sales Accepted Lead/SQL:Sales Qualified Lead/Close)と、初版が2006年に発表されたという情報は、解説記事で確認した二次情報である。Forrester自身の記事では発表年の記載が確認できていない。ひきだしが確認したのは、この解説記事までである。ledgerbennett.com
  • 「CV」という言葉に資料請求・メルマガ登録・問い合わせ・商談化が混在しやすいという指摘、および段階を分けて報告する対策は、ひきだしの見解として構成した。