事例と取材

使われる事例と、使われない事例のちがい

こういうときに読む「事例は作ったのに、サイトに載せて終わりになっている」と感じているとき

事例は、良さの証明ではありません。検討者が社内を説得して、後悔せずに決めるための、先に通った人が置いていった地図です。

事例が使われないとき、原因は運用に見えます。営業に共有していない、置き場所が悪い。でも、もう少し手前にあることが多いです。

使われない事例には、共通点があります

良いことしか書いていない。

導入して助かりました、対応が丁寧でした、また頼みたいです。読むぶんには気持ちのいい文章ですが、営業が商談で渡す場面を思い浮かべにくい。 渡された相手も、読んで「よかったですね」で終わります。

事例を読む人は、ひとりでは決められません

BtoBの購買で回避しなければならないのは、「後で後悔した」という結果です。そのために、決めるまでに同時に3つを満たす必要があります。

  • 自分(チーム)がいいと思う
  • 社内が納得する
  • 成果が出る

とくに2つ目です。 その人は自分だけでは決められません。上司や他部署を説得する材料として、事例を読んでいます。

「対応が丁寧でした」は、社内会議に持っていけません。

地図に要るのは、通った道の凸凹です

先に通った人の地図が役に立つのは、平坦だった道ではなく、曲がり角と段差が描いてあるときです。

入っていると効くもの 読む人が使える場面
何がきっかけで動いたのか 「うちも同じ状態だ」と重ねる
どう探して、何を優先したか 自社の選定基準を作る
迷ったこと・つまずいたこと 社内で聞かれる前に、答えを用意する
導入してから初めて気づいたこと 検討中には見えない落とし穴を知る

とくに3つ目が、社内を説得する材料になります。反対されそうな点を先に知っていれば、その人は準備して会議に臨めます。

書き足すのに、新しく時間をもらう必要はありません

手元の事例を開いて、3つ目が無かったとします。それでも、お客様にもう一度時間をもらう場面は、そう多くありません。

迷いやつまずきの話は、すでに社内に残っていることがあります。

  • 取材メモ。 原稿に採用しなかった部分に残っていることがあります
  • 商談の記録。 決める前に何を心配していたかが書かれています
  • 担当した人の記憶。 「社内で反対があったらしい」は、聞けば出てくることがあります

いちばん早いのは、当時の担当に一言聞くことです。営業が別にいるなら営業へ。自分が営業も兼ねているなら、自分の記憶をたどります。

「あの会社、決める前に何を心配してましたっけ」

出てきた一言を1段落にして、最後にお客様へ確認します。

「こういう形で書き足したいのですが、いかがでしょうか」

メール1本で済みます。

(これから新しく事例を作るときに、お客様がなぜ取材を引き受けてくれるのか、どのくらいの時間をもらうのが適切かは、お客様が取材を引き受けてくれる、7つの理由のほうに書いてあります)

自社で確かめる3つの質問

  1. 直近の事例に、迷ったこと・つまずいたことが書いてありますか。
  2. 無かったとして、当時の担当に聞けば出てきそうですか。
  3. その事例を、読んだ人は社内会議に持っていけますか。

この記事の根拠・出所

ここに書いた考え方は、栗田加奈子が2016年に行った「お客様の声」見直し講座が出所です。外部の調査に基づくものではありません。