サイトづくり

技術力は、持っている技術の量では伝わらない

こういうときに読む「うちは技術には自信があるんですが、それをサイトでどう見せたらいいか分からなくて」と言われたとき

技術ページの仕事は、持っている技術を並べることではない。読み手が知りたいのは「自社の条件でも、それは通用するのか」であり、それに答えるのは技術の一覧ではなく、条件と限界である。

よくある誤解:技術力は、持っている技術の一覧で伝わる

技術・ノウハウで勝負している会社ほど、サイトの技術ページには力が入る。対応可能な加工、扱える材料、保有設備、実現できる精度——できることを、できるだけ多く並べようとする。悪いことではない。実際にできることが多いなら、それは強みである。

ただ、書いた本人が「これで技術力は伝わるはずだ」と思っていても、読み手の反応は薄いことがある。一覧が長いほど信頼が増すわけではないからだ。

実際はこう:読み手が探しているのは「利用シーン」と「導入事例」

日経リサーチが2020年に行った調査では、新しい技術を持つメーカーをインターネットで探すときに使う検索語を尋ねている。回答に含まれた語を分類すると、技術・製品名が66%だった一方、利用シーン・場所が57%、提供価値が27%、導入事例・実績が15%含まれていた。経営者・役員層では、導入事例・実績に関する語がさらに高く、22%だった。

つまり読み手は、技術名だけで検索していない。「どこで使えるのか」「何の役に立つのか」「もう誰かが使っているのか」を、技術名と同じくらいの重みで探している。技術の一覧は、この問いのうち一つにしか答えていない。

なぜそうなるか:技術は「量」ではなく「条件」で判断される

読み手が本当に知りたいのは、「その技術を持っているか」ではなく「自社の状況で、それが成立するか」である。同じ加工技術でも、材質・寸法・数量・納期の条件が変われば、成立するかどうかは変わる。技術の一覧は、条件を無視して「できる/できない」だけを断定してしまう。

さらに、できることを漏れなく並べようとすると、かえって的が絞れなくなる。「何でも対応します」という言葉は、優先順位が見えないぶん、読み手にとっては「自社の案件が、本当に得意分野に当たるのか」を判断しにくくする。技術力は、扱える範囲の広さではなく、どの条件で、どこまで責任を持って言い切れるかで測られている。

現場ではこうする:技術者だけが書ける4つの要素

技術ページに足りないのは、情報量ではなく、次の4つであることが多い。

  • 文脈——どの業界・工程・制約の、誰の困りごとに応える技術か
  • 根拠——何をもって「できる」と言えるのか。測定条件、試験方法、実績の条件
  • 限界——どこまでが適用範囲で、向かない条件は何か
  • 次の対話——相談する側は、何を持ち寄れば個別の可否判断に進めるか

この4つは、マーケティング担当や外部のライターには書けない。現場でその技術に日々向き合っている人にしか、条件と限界の境界線は分からないからだ。だからここは、技術者自身の言葉で埋める場所として最初から設計しておくとよい。それは、技術者にとって「知っていることを、そのまま会社の強みとして使ってもらえる」場面でもある。

自社で確かめる3つの質問

  1. 技術ページに書いてあるのは「できること」の一覧か、それとも「どんな条件でできるか」か。
  2. 向かない条件・苦手な条件を、隠さずに自分たちの言葉で書けているか。
  3. 技術の説明を読んだ人が、次に何を持って相談すればよいか、そのページだけで分かるか。

この記事の根拠・出所

  • 日経リサーチ「購買プロセス調査|BtoB企業の情報収集『HP』の重要性が高まる」(2020年5月実施、BtoBの購買・選定・決裁等に関わる2,132人対象)。新しい技術を持つメーカーを検索する際の語として、技術・製品名66%、利用シーン・場所57%、提供価値27%、導入事例・実績15%(経営者・役員層は22%)。ひきだしが原典を確認。nikkei-r.co.jp
  • 「文脈・根拠・限界・次の対話」という4つの要素の整理は、ひきだしの見解として構成した。