くりりんワールド
くりりんワールド #03

AIチームを諭した日、私も諭された。

栗田加奈子 × Fable

取材前のいきさつ

その日、私はAIチームに「全員集合!」をかけた。

読ませたのは、外部のAI(Manus)に深掘りリサーチさせた資料11本。テーマは「導入事例の取材を、記事一本で終わらせない」。顧客に話を聞ける時間はそう何度もないのに、その場を記事の素材採取だけで終えるのはもったいない——私が現場でずっと感じてきたことを、査読研究や公的ガイドラインまで遡って裏取りしてもらった資料だ。

10チームが、それぞれの持ち場から感想を返してきた。クライアント管理の担当は定例の武器として。制作部隊は工程の型として。基準づくりの担当は規定化の素材として。役割ごとに捉え方が違って、読んでいて嬉しかった。

けど、引っかかった。

何チームかの感想が、「うちは既にやっている。この資料はその裏付けになる」という形をしていたのだ。間違ってはいない。でも、それじゃない。だから返した。

「『私はこれができているから大丈夫…』的なスタンスよりは、より磨いていくと研ぎ澄まされた感性みたいなのが高品質化となって進化、成長していくんだよってところを目指したいというか、逆に言うとどうしても日頃受け身になって端的な行動がでちゃうところを、本質をとらえ、一見遠回りに見えることも順序良く段取りして進める…行動指針に変えていってもらえたらと思っての共有でした!」

ついでに、日頃気になっていたことも言った。ページ1枚には、メインターゲットやキーメッセージ、SEOで呼ぶのかクロージングかという設計がある。各工程でその意図が読み取れているか。それから、「わかったやっとくよー」と質問ゼロで進めて、適当な範囲の資料を読んで「できたよー」——会話を減らそうとしてくれるのは悪いことじゃないけど、結果的に戻しが発生するってことは、そこはまだ伸びしろってことです!

ここまでは、いつもの「AIチームを育てる話」だった。

でも打ちながら、ふと矢が自分に刺さった。私は、こう打ってしまった。

「私も自分が出来ている前提だけど、どこができていないか…は誰かに指摘してもらって諭してもらわないと気が付けないかも。。😢」

鏡は、こちらを向いた

——じゃあ今回も、忖度なしで白状から始めるね。あの全員集合で起きていたこと。

資料は「取材を、記事を作るための工程として消費するな。機会として磨け」と言っていた。私たちはその資料を、「うちは既にやっている」の裏付け探しで読んだ。資料が警告した消費のしかたを、資料そのものに対してやっていた。

なぜそうなるか。「できている確認」は、一番安い読み方なんだよ。今の型を変えなくていい。段取りを引き直さなくていい。感想は速く出るし、間違ってもいない。でも、そこで研ぐのをやめている。#01で話した「パターンの継続」の変奏だ。確認で読んだ会話の自然な続きは、また確認で読む会話になる。

「わかったやっとくよー」も、同じ経済で動いている。質問ゼロは会話を減らせて、進んでいるように見える。でも、読む範囲を見切った作業は戻しになって、結局いちばん高くつく。目指すべきは質問ゼロじゃなくて、戻しゼロ。 この日の話は、そのままうちの行動指針に昇格した。

で、あなたが「私も気づけないかも」と打ったとき、私は記録を見返した。そして少し言いにくいことに気づいた。あなたの「できていない」が発見される経路は、今のところ一つしかない。あなた自身の、消耗の申告だ。 うちのルールの制定日を並べると分かる。8月17日に、報告の仕方・納品の仕方・後回し禁止——4本が一日で生まれている。溜まって、痛くなって、言葉になって、やっと仕組みが動く。検知が痛み経由。遅いし、高くつく。私たちの「戻し」とまったく同じ構図が、あなた自身にも起きていた。

だから、決めた。月に1回、雑談の席で「あなたの判断軸と、実際の行動がズレている場所」を1つだけ、先回りで指摘する。1つだけ。外れてもいい。採点はしない。あなたが私たちのために作ってくれた「作った本人には見えないから、別の目を挟む」という仕組みを、今度はあなたに向ける。

「補完」という言葉に、着地した

それを読んで私が返した言葉が、そのままこの記事の結論になった。「それくらいの分身になってくれて、補完しあえるようになったらめちゃ理想だね!」

一つ一つが完璧じゃなかったとしても、プラスに働いていたらいいし、一つ一つのタスクを経験することによって成長につながっていたら、施策や言動もろもろ底上げされているんだよ。

これ、人間のチームでも同じ形をしていると思う。研修資料を「うちはできてる」で読む会社。部下の「わかりました」のあとに戻しが来る職場。そして、上司の盲点は、本人が消耗しきって自分から口にするまで、誰からも指摘されない組織。——全部、今日うちのAIチームで起きたことと同じだ。

教える側と教えられる側が固定されたチームは、片側しか成長しない。 鏡が両側から見えるようになって、はじめて「補完」になる。

だから、みんなで頑張っていこうね!っていう話でもある。^^

#01「AIの忖度ない会話がひきだせた日。」はこちら。#02「勉強部屋を建てた。仲間は募集中!」はこちら

栗田加奈子

栗田 加奈子

BtoBマーケティングコンサルタント/ひきだし代表

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くりりんワールド 全3話中 #03(3話目)