見落とし注意
見落とし注意 #02

GA離れしかけていた私が、BigQueryにハマった。SQLの壁は、AIが越えてくれる

栗田加奈子

自社のGA4で、どんな人がどのページを見て、どこで帰っていったのか。1件ずつたどろうとしたら、何か月前までさかのぼれるだろうか。

答えは、GA4の中の1つの設定で決まっている。初期設定のままなら、2か月前までだ。

私はHIKIDASHI(以下、ひきだし)として、中小企業のホームページの運用を支える仕事をしている。アクセス解析は仕事の真ん中にある道具のはずなのに、正直に言うと、ここ数年の私は、GA4から少し離れかけていた。細かいデータが期限で消えていくのも知っていて、嫌だなあと思っていた。

私が見落としていたのは、細かいデータの写しを毎日、別の場所に残しておける道具を、上級者でなくても使える時代が来ていたことだ。最近、GA4をBigQueryにつないでみて、すっかりハマってしまった。この記事は、GA離れしかけていた側から見た、その話だ。

GA4になって、前は見られたデータに手が届きにくくなった

Googleのアクセス解析は、2023年7月1日に、それまでのユニバーサル アナリティクス(標準版)がデータの処理を止め、GA4に置き換わった。

画面の作りも、数え方の考え方も変わった。前は数回のクリックで出していた数字が、どこにあるのかを探すところから始まる。探して、見つからなくて、そのままにする。そういう場面が、少しずつ増えていった。

あなたの会社でも、GA4に切り替わってから、開く回数が減っていないだろうか。

CVした人の足取りはMAツールで追えるので、GA4は「軽く見る」ものになっていた

問い合わせや資料請求のように、サイトで達成してほしいゴールのことを、CV(コンバージョン)と呼ぶ。

ゴールに届いた人のことは、GA4を開かなくても、ある程度は分かる。問い合わせのメールを読めば、誰が何を求めて来たのかは分かる。MAツール(見込み客の管理と追いかけを助ける、営業向けの道具)を入れている会社なら、その人がどのページを見てから来たのかまで、1人ずつたどれる。私の場合は、こちらで足りてしまった。

そうなると、GA4の出番は減る。アクセスが増えたか減ったか、どのページがよく見られているか。それを月に一度ざっと見て、閉じる。気づけば私にとってのGA4は、「見られる範囲を、軽く見る」だけの道具になっていた。

けれど、メールやMAツールで分かるのは、主に、フォームで名乗ってくれた人のことだ。ゴールに届かずに帰っていった人たちが、どこから来て、どこで引き返したのか。それを持っているのは、GA4のほうだった。

細かいデータは最大14か月で消える。それがずっと嫌だった

ところが、GA4の細かいデータを掘ろうとすると、別の壁がある。

GA4(無料版)には、データの保存期間の設定がある。選べるのは「2か月」か「14か月」の2つだけで、初期設定は2か月。Googleの公式ヘルプに、そう書いてある。

この期間が効くのは、「探索」(自分で切り口を選んで、1件ずつのデータまで降りていく分析の画面)や「ファネル」(入口からゴールまでの段ごとに、どこで人が減ったかを見る分析)のほうだ。毎日の訪問数のように、標準のレポートに出る集計の数字には効かない。

絵にすると、こうなる。月ごとの合計を書いた帳簿は残る。けれど、その合計のもとになった伝票の束は、長くても14か月で処分される。初期設定のままなら、2か月で処分される。

今年の動きを、一昨年の同じ時期と比べてみたくなったとき。帳簿の合計はあっても、伝票はもうない。

合計は、あらかじめ決めた切り口でまとめた数字だ。あとから「こういう動き方をした人だけ数えたい」と思いついても、合計からは作り直せない。作り直せるのは、伝票が残っているときだけだ。

私は、これがずっと嫌だなあと思っていた。

データ分析のプロが見せるBigQueryの画面は、別世界に見えていた

GA4の伝票が処分されるのは止められない。けれど、伝票の写しを、別の倉庫に残しておく方法はある。その倉庫がBigQuery(ビッグクエリ)だ。

BigQueryは、Googleのクラウドにある、大量のデータを貯めて問い合わせができる保管庫だ。GA4とつなぐと、ページを見た、ボタンを押した、といった1つ1つの出来事が、まとめる前の形のまま、1行ずつ貯まっていく。伝票の写しが1枚ずつ、倉庫へ入っていくイメージだ。

伝票には、たとえばこんなことが書いてある。ひきだしのサイトの伝票を実際に1枚めくってみたら、来た道の分類や入口の印、ちゃんと見ていった訪問かどうかの判定まで入っていた。

  • いつ、誰が:日時。初めての訪問か、何回目の訪問か。ちゃんと見ていった訪問かどうかの判定も。名前ではなく、同じブラウザから来た伝票をひとまとめにできる番号(会員IDなどを送っていれば、それも)
  • どこから来たか:検索、SNS、広告、メール、ほかのサイトといった分類と、その元になったサイトの名前。広告やメールのリンクに付けた目印(キャンペーン名など)も
  • 何を見たか:どのページから入ったか(入口のページには印が付く)、ページのアドレスと題名、その前にいたページ。日時と訪問ごとの番号もあるので、入口から最後まで、見た順に並べ直せる
  • どう動いたか:ページの下のほうまでスクロールした、ファイルをダウンロードした、外のサイトへのリンクを押した、サイト内で検索した、埋め込みのYouTube動画を再生した。ページを開いて見ていた時間も
  • ゴールに近い動き:問い合わせフォームの送信、資料請求、電話番号のタップなど
  • どんな環境で:スマホかタブレットかPCか、OS、ブラウザ、言語。国や地域、都市(IPアドレスからの推定)
  • ネットで売っているなら:購入、売上、商品
  • 独自に送っている情報:自分で足した計測(たとえばSNSのボタンを押した)、会員かどうか、問い合わせの種類など

書いてあるのは、GA4で計測している動きと、その設定で送っている情報だけだ。

大事なのは、これを組み合わせて、条件で抜き出せることだ。たとえば「広告から来て、事例を2本読んで、スマホで、問い合わせまで進んだ人」。1つ1つの項目が、条件の部品になる。私のような人間には、この部品の多さがたまらない。

存在は前から知っていた。データ分析の専門会社のセミナーで、BigQueryとTableau(データをグラフや表にして見せる道具)を組み合わせた画面を見たこともある。GA4の画面では出せない切り口が、次々に出てくる。ちょっと輝いて見えて、正直うらやましかった。

ただ、壁があった。倉庫から伝票を取り出すには、SQL(データベースに問い合わせるための言葉)を書く必要がある。分析の専任がいる会社の道具で、使いこなせる人だけのもの。私の中で、BigQueryはそういう上の層の道具だった。

AIに聞けば、SQLを書けなくても生データから答えが返ってくる

その壁を、AIが越えてくれた。

いまは、Claude Code(AIに作業を任せる道具)を使って、BigQueryに問い合わせている。知りたいことを、頭の中で筋道を立てながら、ふだんの言葉で頼む。するとClaude CodeがSQLを書いて問い合わせ、データと、そこから読めることを並べて返してくる。私は根拠と結果を見て、納得できたら、毎月お客様にお出ししているレポートに反映してもらう。「じゃ、レポートに反映して!」の一言で済む。

試しに、あなたの会社で気になっている「動き方」を1つ思い浮かべてみてほしい。どのページから入って、どこまで見て、どうしたか。その動き方をした人たちを、仮に「パターンAの人」と呼ぶ。

知りたいのは、たとえば「今月、パターンAの人は増えている?」だ。けれど、集計された画面は、集計した切り口でしか答えてくれない。その切り口の表がなければ、返事は「?」になる。

一方、倉庫の伝票は毎日積み上がっていく。人の手でめくれる量ではない。漫画にすると、こんな感じだ。

左のコマでは、集計のグラフが並ぶモニターに「今月パターンAの人増えてる?順調?」と問いかけても、返ってくるのは「?」だけ。右のコマでは、紙の伝票が波のように押し寄せる中を、緑の顔のロボットがボードで乗りこなし、網で「パターンA~♪」とすくっている。もう一体のロボットが光る右肩上がりのグラフを差し出し、オレンジのマフラーでノートパソコンを抱えた私が、目を輝かせて指さしている

波に乗って網を振っているのがAI、すくった結果を受け取って指さしているのが私だ。

倉庫にあるのは、切り口を決める前の伝票そのものだ。押し寄せる伝票の波にAIが乗って、パターンAの人の伝票だけを網ですくい、数えて持ってくる。

すくってきた数字は、AIの想像ではなく、貯まっている伝票を数えた結果だ。だから、根拠をたどれる。

ここで、めちゃハマった。いまでは、使わない理由が見つからない。

ハマってみたら、お客様のサイトにも全部つないでいた

自分の手元で一度こうなると、お客様のサイトにも同じ倉庫を用意したくなる。気づけば、運用をお手伝いしているお客様のサイトには、すべてGA4とBigQueryをつないである。

楽しいからだけではない。Googleの公式ヘルプによると、BigQueryへの書き出しは、つなぎ終えてから24時間以内に始まり、そこから毎日、前日の分が届く。伝票が倉庫に貯まり始めるのは、つないだ日からだ。だから、ひきだしが運用をお預かりしているサイトでは、分析したくなる日を待たずに、最初からつないでおく決まりにしている。

世の中では、BigQueryはまだ、分析の専任がいる会社の道具に見えやすい。私自身も、つい最近まで、そう思っていた。けれど、ふだんの言葉で問いを投げられるいま、要るのはSQLの腕前より、何を知りたいかのほうだ。だから、ひきだしは、BigQueryを「上級者になったら使う道具」ではなく、「サイトを運用するなら最初から用意しておく倉庫」として扱っている。

まずは自社のGA4で、保存期間の設定を見てみる

私がBigQueryを上の層の道具だと思っていたあいだも、GA4の伝票は、期限が来るたびに処分されていた。あなたの会社のGA4でも、同じことが起きているかもしれない。

まず確かめたいのは、その期限だ。自社のGA4で[管理]を開いて、[データの保持]の設定を探してみてほしい。

「2か月」になっていたら、伝票は2か月で処分されている。設定を変えるにはGA4の編集者の権限が要るが、14か月への変更は、その画面からできる(反映は24時間後)。延ばした期間が当てはまるのは、すでに集めたデータのうち、まだ消えていない分だ。消えた分は戻らないので、気づいた日に変えるのがいちばん早い。

管理画面に入れなければ、GA4を設定した制作会社や担当者に「保存期間は何か月になっていますか」と1行聞くだけでいい。


出典

栗田加奈子

栗田 加奈子

BtoBマーケティングコンサルタント/ひきだし代表

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